人事評価制度

キャリアパスで役職者が育つ

キャリアパスが大切なのは入社したての人間だけではありません。新しく役職に付いた人にとっても、このキャリアパスは非常に大切な情報となります。

例えば、誰かを今日から課長に任命したとします。その人は昨日までは課長ではなかったわけですから、当然課長の仕事を知らないということです。だから、課長になったらこういうことが要求される、ということを教えてあげる必要があるということです。

ところが、こういう基本的なことがまったく出来ていない会社が多く、課長には任命するものの、実際に何をするかはその人任せで、役職者としての指導がまったく出来ていない場合が多いのです。

その結果、課長や部長なのに、一般の社員と同じ仕事をする人間が出来てしまうという事が多いのですが、これはその人の責任でもあることですが、教えていない会社側にはさらに大きな責任があるということです。

実は、これこそ社員は増えても組織化が進まない会社の典型的な姿です。名前だけの役職者は沢山いるが、組織としての動きがまったく見られないのは、何をしたらいいのかを役職者自身が分かっていないということです。

また、役職者の基準や役割が明確になっていないために、明らかにこの人をその役職にするのは間違っているという人を大切なポストに据えているという場合もありますが、これなどは明確に組織内に不審を招く原因となります。

企業の組織化に伴い、役職者の研修に立ち会う場合が多いのですが、こういった問題はキャリアパスが組織に備わっていないことで起きていると言えます。

キャリアパスで指導にも道筋ができる

キャリアパスを作ることで得られるもう一つの大きな利益は、そのキャリアパスが上司にとって部下を教えるための道筋となるということです。先ほど、キャリアパスを作ることで入社した人の不安がなくなると解説しましたが、同時に、考える側の人間にも、このキャリアパスは指導のための有効な手段となります。

キャリアパスは自分が成長していくためにも、また人を指導するためにも有効だということですが、このことの利益として何が得られるかというと、組織内での上司部下間のコミュニケーションが多くなったり、教える教わるという形が自然に発生するという利益を組織内に生んでいきます。

キャリアパスが風化する理由

人事評価制度の開発時に、かなりたくさんの評価制度のリサーチをしたと言いましたが、キャリアパスを作る、もしくは各段階の業務テーブルを作るということは、ほとんどの評価制度に共通していることなので、評価制度を導入したことがある会社ならば、何らかの形で作られている場合があると思います。また過去に何度か作った経験があるかもしれませんが、ここで問題になるのが、作ったけれども、結局風化してしまって組織の中に浸透しなかったという問題です。

また、先ほどの文章を読んで「何だキャリアパスか!それは作ったけれども全然使えなかった」と思った方が少なからずいると思いますが、どうしてせっかく作ったキャリアパスが完成した日を境にどんどん風化してしまうのでしょうか?

その答えは精度と運用の仕方にあるようです

当社の提案するキャリアパスの使い方と、せっかく作ったキャリアパスを風化させてしまった会社の使い方の違いを比べてみると、当社の提案は、教育のベースとして全社的にキャリアパスをオープンにして使う、というものなのに対して、風化させてしまった会社では、評価のみの用途としてキャリアパスを考えて(あるいは使用して)いて、全社的にオープンにしていなかったという違いがありました。

また、さらに調べていくと、キャリアパスをオープンにしないで使う会社が圧倒的に多かったという事実がありました。

この結果について、非常に気になったので、「せっかくキャリアパスを作ったのにオープンにしないのはなぜか?」という質問をいろいろな会社にしてみた結果、“キャリアパス(=評価)の精度が低くて公表できないから”という答えが多く返ってきました。

要するに、発表してしまうと、“こんな分かりにくい、もしくはお粗末な基準で評価されているんだと”思われてしまう可能性があるので、公表できないということでした。

実はここに、評価制度を作る上で非常に重大な問題がありました。それは誰がどうやって作るべきか?という問題です。

当社はこの結論として、理論構築と言語化のプロ=専門家が作るべきであるという結論に達しました。

というのも、評価制度は、評価の基準を作るわけですから、評価する人間も評価される人間にとっても、あるいはどんな立場の人間からも同じように判断できる言葉であり表現でなければならないわけですから、非常に繊細な言葉の組み合わせで構築されなければならないということです。

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